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Windows 10導入を阻害するドル高を華麗に回避する方法

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 Windows 10搭載のPCにリプレースしようと計画中のIT部門は、為替相場で米ドルが高騰しているために予算を超過する可能性がある。

 2015年7月の出荷が発表されたWindows 10に移行しようかと検討を始めたIT部門にとって、最悪のタイミングでデスクトップPCの価格が上昇している。

 Windows 8が登場したとき、購入から4~5年たったPCでWindows 7を使い続ける決断を下し、OSのアップグレードを見送ったユーザーは多かった。

 発売から5年が過ぎたWindows 7はいろいろな意味で、業務用PCに搭載されるOSのデファクトスタンダードであるといえる。しかし2015年1月、Windows 7は米Microsoftの製品ライフサイクルロードマップの中では、メインストリームサポートから延長サポートのフェーズに移った。

 MicrosoftはWindows 7を2020年までサポートすると公言しているが、後継バージョンであるWindows 10のリリースを間近に控えている。IT部門はPCの更新を兼ねてOSアップグレードを検討することだろう。

 Windows 7ユーザーであれば、Windows 10へのアップグレードは無料でできる。ただし古いPCで利用していた周辺機器が、Windows 10でサポートされなくなる可能性も大いにある。PCの価格が上昇傾向にある現在、いつどのようにアップグレードの実施に踏み切るか、IT部門は慎重に検討を進めなければならない。

●周辺機器の削減でコスト低減

 米調査会社Gartnerのアナリストは、2015年、大企業は使用中のPCの利用をさらに継続する傾向にあると予測する。

 「大企業はPC1台の利用期間を延長する傾向にある。(調査の結果)2014年に比べてその期間は6カ月長くなった。より安価なモデルにリプレースしたり、重要な機能に絞って要件の一部を削ったりするのではなく、目の前にあるものを使い続けるということだ」と指摘するのは、Gartnerのリサーチディレクター、ランジット・アトワル氏だ。

 実業界ではコスト削減の取り組みとして、PCを購入する際に光学ドライブやオプションのアクセサリを付けないモデルを選ぶようになると同氏は予測する。

 「PCの単価が上がっているので、われわれはこんな予測を立てている。大企業は2015年に購入するPCの台数を20%削減する。中小企業は、安さを最優先するコンシューマーと同じように、(今まで購入していた業務用モデルではなく)コンシューマー向けのモデルを購入するようになる」(アトワル氏)

●仮想デスクトップへの移行

 まとまった台数のPCをリプレースする時期を迎えているなら、それはCIOにとって社内のデスクトップITを再考するチャンスだ。IT部門はデスクトップの仮想化を進めているが、その狙いはデスクトップ管理の効率向上、私用端末の業務利用(BYOD)およびタブレット端末によるコンピューティングのサポート、またこれらを実現すれば達成できるITコストの低減などにある。

 デスクトップを仮想化する場合、シンクライアントのアクセス端末は必須というわけではない。レガシーPCの再利用という手もある。これは結果的に、PCアップグレードの費用節減策になるかもしれない。ただし、仮想化の本当の利点は、Windowsデスクトップのコンピューティング環境を拡大し、複数種類のデバイスにわたる制御を実現できるところにある。

 Gartnerの予測では、2016年までにタブレットの売上額がデスクトップPCのそれを追い越すときが来るという。そうなるとIT部門は否応なく、Windowsベースのデバイスに加えてAndroidベースのタブレットやiPadもサポートしなければならなくなる。

 今はもう、業務システムに接続している端末が全てWindowsベースのPCとは限らない。IT管理者は、業務利用のユーザーが複数種類のデバイスからWindowsアプリケーションにアクセスするための方策を打ち出さなければならない。

 その一例が靴メーカーの英Dr.Martens(ドクターマーチン)だ。同社は米Parallelsの「2X Remote Application Server(Parallels 2X RAS)」を導入し、650人の従業員が、基幹業務アプリケーションおよびそれに関連するデータにアクセスできる環境を実現した。アプリケーションを仮想化しているため、IT部門はユーザーに対するサービスレベルを設定し管理することができるだけでなく、データを集中管理して社内システムへのセキュアなアクセスも確保している。

 また、デスクトップの仮想化も拡大されている。負荷の高いコンピューティングアプリケーションの分野でも仮想化テクノロジーを応用できることを示す試みとして、高度な処理を行うエンジニアリングワークステーションまで仮想化して運用している。

 米Dellは、別のソフトウェアサプライヤーから認定された仮想化ワークステーションのモデル「Dell Precision Appliance for Wyse」を最近発表した。ワークステーションクラスのコンピューティングを提供するというのが、この製品のアピールポイントだ。この製品は、米Siemens PLMの製品ライフサイクル管理ソフトウェアを稼働させられるという認定を受けている。

 企業のCIOがデスクトップの仮想化を検討し始めると、数々の課題に突き当たる。中でも注意が必要なのは、IT部門の中で異なる役割を担ってきたチーム同士のコラボレーションが必要になることだ。

 米調査会社Forrester Researchは2015年4月、「Build digital workspace delivery systems to give employees the right tools for their jobs」(デジタルワークスペースを実現するシステムによって、担当業務に合わせた適切なツールを従業員に提供するには)と題したリポートを発表した。この中で、著者であるアナリストのデイビッド・ジョンソン氏は「サーバホストの仮想デスクトッププログラムは、ハイパーバイザー、ストレージ、ネットワークの分析など高度なスキルが要求される上に、デスクトップコンピューティング環境に関する知識も必要だ」と警告している。

 「また、複数のテクノロジー領域にわたる緊密な協業も必要だ。さらに、その組織のコンピューティングのニーズをよく把握して、関係者間の議論をまとめ、プロジェクトの成功に結び付けることができる経験豊富なプロジェクトリーダーの力も欠かせない」と同氏は説明する。

●PCアップグレードの資金調達

 PCに対して、もともとの予算以上の額を投資したいというCIOはいないだろう。しかし、だからといってPCのアップグレードを先送りするという選択肢もない。利用目的に合わなくなったレガシーPCはどうにもならないので、リプレースするしかないのは明白だ。

 Windows 10を利用すれば、多様なタイプのデバイスをパイプラインに加えられる。CIOにとってこの状況は、IT部門が実務部門のユーザーに対して、業務に最適なツールを提供できることを示す絶好の機会にもなる。例えば薄くて軽くて動作も速い、タブレットとしても使える「2-in-1」タイプのノートPCは、さまざまな場面で重宝するだろう。Android(ベースのデバイス)や米Appleのデバイスに比べて、Windows 10には新しい多様なデバイスを通じて、より豊かな業務運用環境とコンシューマーにも分かりやすいコンピューティング環境を同時に実現する可能性を感じる。

 最新のWindows 10搭載デバイスを利用したデスクトップIT戦略を立案する権限を持つCIOならば、リースの利用も検討すべき選択肢に加えていいだろう。米調査会社IDCによると、全世界のITリースおよび資金調達の市場は、2010~2015年のCAGR(年平均成長率)が4.4%であり、2015年中に1485億ドル規模に達すると予測されている。

 今はこうして新しいPCへのアップグレードをめぐる論争が盛んだが、その一方でCIOは依然として、IT部門が(組織の中で)今後も業務の一端を担い続けるにはどんな仕事をすればいいのかという、大きな疑問に向き合っている。実務部門の従業員が傑出したテクノロジーを突然職場に持ち込んで提案してくることは珍しくない、ITコンシューマライゼーションの時代を迎えたからだ。従って、IT部門は自社事業の戦略を把握して、それに貢献できる力があるというアピールを社内で展開しなければならない。すると、(コスト削減のために)現存のものより仕様のレベルを落としたPCを購入するのは、最善の方法とはいえない。

 CEOが自ら業務のデジタル化に取り組む世界では、テクノロジーに明るい企業は目新しい機器をいち早く(業務に)導入する傾向にある。Windows 10と新しいデバイスの登場で、CIOはIT部門が真の意味で事業の方向性を的確に捉えていることを示さなければならない、正念場を迎えている。

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